神戸大学MBA

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2015年度ケースプロジェクト発表会
 

2015年8月1日(土)

今年度は、ここ10年で最も難易度が高いテーマを出題しました。「Re-Generaion:いかにソニーに輝きを取り戻すのか」がそれで、テーマの大きさに12チームとも苦しみ抜いたようです。その反面、またはそれがゆえ、内省レポートの水準は極めて高く、学習効果は従来に増して高かったと判断しています。

巨大企業の再生をテーマに選んだのは、電機業界を中心に日本でも再生を迫られる巨大企業が目立つようになった現実に応答してのことです。並行して走るゼネラルマネジメント応用研究では既にGEの変革やIBMの再生を教材として取り上げており、科目間の連携を強化する意味もありました。事前の変革や事後の再生に臨む人材を輩出することをMBAプログラムの使命と捉えると、今回の試みを単発で終わらせてはいけないと考えています。


全行程を終えてプロジェクトを振り返ってみると、反省点はいくつかあります。まず、ソニーという企業体の大きさをフルに受け止めたチームが意外と少なかった点を挙げておかなければなりません。端的に言えば、その解で本当にオールソニーを救えるのかという問いを突きつけられて、イエスと胸を張れるチームは数えるほどもありませんでした。分業体制に組み込まれ、与えられた役割を果たすよう求められる職場の現実との対比があまりに大きく、誰もが戸惑ったのでしょう。ただし、このプロジェクトを貴重な体験と受け止めた内省レポートが目立った事実は、注目に値すると思います。MBA在籍中に経営者の視点から世の中を見渡した(または見渡し損ねた)経験は、どこかで生きる可能性が高いと確信しています。

次に、診断の甘さも大きな反省点です。失った「輝き」を取り戻すという出題の意味をもっと深く考えるべきだったと内省するレポートも目立ちましたが、まさにそのとおりだと思います。ソニーが輝きを失ったという見立て自体に反論を試みたチームは皆無でしたが、ソニーは凋落が揶揄された時期においても、ニューズ(ファイルサーバー)、アイボ(ペットロボット)、MD(携帯音楽プレーヤー)、コックーン(HDDレコーダー)、プレーステーション(ゲームプラットフォーム)、ベガ(平面ブラウン管テレビ)、エアボード(ロケーションフリーTV)、NEX(APS-Cミラーレス一眼レフカメラ)など、初代ウォークマン以上に革新的な製品を次から次に世に送り出していたのです。それでも「輝き」が失せたのはなぜかと思考を進めるところが、今年度のプロジェクトの第一歩となるべきでした。どこかで気がついて手戻しをするチームが出ることを最後の最後まで期待しましたが、それは淡い期待に終わりました。

診断について言葉を足すなら、サイモンのいう「原因と結果の連鎖」も反省点の一つです。出井時代のEVA経営に原因を求めるチームが少なからずありましたが、ソニーが順調であれば、誰もEVA経営など始めるはずはないでしょう。原因は出井時代より前にあり、対応が後手に後手に回った結果が後で表に出ていると見ることも可能です。企業はゴーイングコンサーンであり、明らかに原因と思われる事象も、往々にして結果であることが珍しくありません。ゆえにトヨタ流の5つのなぜが有効になるのです。今回のケースに適用すると、技術で勝って事業に敗れたベータマックス(家庭用ビデオテープレコーダー)の後続手に最初の躓き(原因)を求める見方があってよかったようにも思います。予期せぬ敗北が精神的にショックで、冷静を欠く対応に走ったところから変調が始まったのだとすれば、随分違った答えが出たはずです。

今年度の優勝チームは相対的にダイバーシティ水準の低い大阪北でした。テーマの大きさに見合う切り口を選んだ唯一のチームで、綿密なフィールドリサーチに基づく立論ができており、順当な結果だと受け止めています。ただし、診断を組織論に求める行き方には疑問が残りました。当日の総括コメントで触れたように、ソニー以外にアイワ、三洋、ビクター、シャープやパナソニックも同じ時期に変調を来したからです。この現象を個別企業の問題と捉えるのは適切ではないと思います。むしろ、6社に共通する外部環境の変化に注目すべきだったのではないでしょうか。日本では、真因が外部環境の変化にあるのに、問題の所在を社内、または組織論に求める「内向き」指向が異様に目立ちます。今回は、チーム多数が同じ罠に落ちてしまいました。しかしながら、その点を内省したレポートは数えるほどもなかったのが実情です。あらためて再考を迫りたいところです。

僅差で準優勝に終わった芦屋チームも、事業横断的な切り口を設定した点で大阪北と似ています。逆に言うと、特定の事業で突破を図ったチームは、ほぼ全滅でした。唯一の例外は三位に滑り込んだ宝塚チームで、ここは既存事業とは距離のある農業に焦点を当てる発想が功を奏したように思います。こういうマクロ分析は、できれば内省レポートに盛り込んで欲しいところです。プロジェクトが終わったあとも考え続けてほしいテーマなので、解題はこのあたりでやめておきます。

最後に未来の学生のために付け加えておくと、発想のオリジナリティやユニークさは、思うほど簡単に手に入りません。今年度の最終発表を振り返ると、その解はソニーが既にトライしたのではという内容が少なくありませんでした。相当に考え詰めないと、当事者たちには勝てません。近年はコンサルタントや社外取締役のように企業の外に身を置きながら社業に口を挟む人への需要が増えています。そういうニーズに応えることのできる人材を目指すなら、当事者たちを上回る視点を持てるように鍛錬しなければなりません。MBAには、そういう鍛錬の意味合いもあります。そこは意識してください。また、内省レポートを事後的な経過報告と勘違いする人も後を絶ちません。ミンツバーグの著書を読んで、「内省」の意味を正しく理解してからレポートを書くよう努めてください。

(文責:三品和広)

 

 

◆金賞チーム

   
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