神戸大学MBA

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2014年度ケースプロジェクト発表会
 

2014年8月2日(土)

ケースプロジェクトは、指定されたテーマに沿うケースを自由に選んで、指定されたチームでプレゼンテーションに持ち込むものです。従来はケース選択の範囲に制限を加えていませんでしたが、昨年度は特定の業界に制限し、今年度は特定の企業群に制限するところまで改革を進めてきました。それに伴い、ケースの意味は「企業事例」から「解釈の切り口」に変化して、ケース選択が審査結果を左右する程度は従来より格段に小さくなったと言ってよいかと思います。リサーチの進め方やプレゼンテーションの論理構成が重要性を増した結果 を見て、改革の狙いは当たったと受け止めています。受講者の内省レポートを読んでも、全チームが同じ土俵に上り、同じ現実の異なる解釈に挑んだことにより、他チームの発表から受ける刺激が桁違いに大きくなったことを確認できます。

今年度は、「JR大阪三越伊勢丹の早すぎる計画変更(撤収)」を共通テーマとして、この現象に対する異なる解釈を各チームのケースと設定しました。ポジティブな解釈を試みたチームが1つで、残る11チームは計画変更を失敗と解釈しました。後者の切り口は、下図のように整理してよいと思います。縦軸は失敗の原因が埋め込まれたタイミングを問うもので、横軸はエビデンスの質を問います。右に行けば行くほど足で稼いだエビデンスが豊富で、左に行けば行くほどエビデンスが欠落していると見てください。中央付近は、既成のエビデンスを流用したり、少し手を加えただけという印象が残る領域です。


この図で赤字の切り口は100点満点に換算して審査結果が80点以上、ピンク字の切り口は同じく60点以上を記録したものです。なかでも右上に来る赤字のチームはメダル受賞の快挙を成し遂げています。女子トイレチームは惜しくも4位となりましたが、私はメダルに値する内容だったと受け止めています。

図では捉えていないプレゼンテーションの巧拙も審査結果を大きく左右しますが、この図から明らかなように、開店前に固定化した不変要素を切り口としたうえで、オリジナリティの高いエビデンスを集めて自説を支えたチームが好成績を収めています。開店後の可変要素は駄目とわかった時点で変えればよいので、有力な切り口とは言えません。ケース選択の時点までに、そこまでチーム内の議論が深まったか否か、頭が回ったか否かが勝敗を分けたとしたら、正当な審査結果と言ってよいでしょう。

個別にコメントしておくと、PMIチームは勝てる条件が揃っていたにもかかわらず、時間切れに終わったプレゼンテーションのタイムマネジメントが悔やまれます。逆に食品売場に切り口を求めたチームは巧みなプレゼンテーションで順位を上げました。左翼に位置するチームは概してエビデンスの収集と提示の仕方において劣勢に陥りましたが、ポイントチームあたりは切り口の可変性、または不変性が自明ではない面があり、不変性を訴えるエビデンスを集めていれば、もっと上位に食い込む可能性があったと思います。

チームを支配する空気が定まっていない段階で、切り口の選択という次元を超越して、数多くの切り口を分ける軸が何であるのかを見据えることは、決して容易ではありません。しかしながら、戦略の優劣も同じようなメカニズムで決まるのが現実世界です。ほかの人に先駆けて分化軸を見つければ優位に立てる可能性を意識して、今後も難易度の高い初動対策に挑戦してほしいと思います。

なお、金賞に輝いたのは図に登場しないチームでした。ほかのチームが失敗という解釈からスタートしたのに対して、その大前提に疑いを差し挟んだことにより、審査員にサプライズをもたらしたのだと思います。それ自体は正当な戦術的勝利ですが、巨額の損失を十分にカバーして余りある改装後の目論見がJRサイドにあるのかという疑問は解消されないまま終わっており、私としては議論の運び方にも、エビデンスの出し方にも、不満が残ったことを書き添えておきます。

今回の課題は、JR西日本が京都駅に誘致した伊勢丹が大成功を収めたという事実を踏まえ、それと整合的な切り口を立てるよう迫ったものでした。類似の成功例は、名古屋駅の高島屋、札幌駅の大丸にも見ることができます。なぜ大阪だけ失敗に終わったのでしょうか。この問いと真摯に向き合っていれば、大阪駅だけ大丸と三越伊勢丹とルクアが同居する布陣になっていることに気付くはずです。三越伊勢丹の側に注意を引かれると見逃してしまいがちなポイントですが、大阪商圏ではなく、大阪駅構内におけるオーバーストア現象は取り上げるに値する論点だったように思います。

こうして4ヶ月の熱闘を振り返ってみると、視点をどこに設定するかが成否を分けるのだとあらためて痛感します。やはり勝負は初動にあるということなのでしょう。次のテーマプロジェクトでの健闘を祈ります。

(文責:三品和広)

 

 

◆金賞チーム

※金賞チームのインタビューは
 こちらからご覧下さい。


 
 
◇銀賞チーム
   
 
◇銅賞チーム