神戸大学MBA

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2011年度ケースプロジェクト発表会
 

2011年8月6日(土)

神戸大学のMBAプログラムは、プロジェクト方式を最大の「売り」にしています。その第一弾がケースプロジェクトです。これはチーム編成とテーマを所与として、与えられたテーマに適合するケースを任意で一つ選定し、それを研究対象として分析するよう要求するものです。リサーチとしては初歩的な設定ながら、入学と同時に始まる課題だけに、チームを有効に機能させるのは容易ではありません。そこに大きな試練があります。世間でMBAというと頭デッカチのイメージが独り歩きしがちですが、平均年齢が30代の半ばに達する神戸大学のMBAプログラムでは人間力や実践のスキルを重視しており、ケースプロジェクトはその象徴と言ってよいでしょう。

今年度のテーマにはDISPLACEMENT、敢えて邦訳するなら「王者追放」を選びました。その背景には、門外漢の時代が来ているのではないかという問題意識があります。ある領域で厚く経験を蓄積した王者に相当する企業が無類の強みを発揮していたのが従来の姿だとすると、現在は経験の蓄積を持たない門外漢がどこからとなく現れ、いつのまにか王者に成り代わる姿が目立ちます。たとえば、携帯電話とは縁のなかったアップルがノキアやモトローラ、そして国内ではパナソニックやNECを王者の座から引きずり降ろしてしまった事例が一つの典型です。もっと古いところでは、サウスウェスト航空(創業者は弁護士)がイースタン航空を倒産に追いやりました。

掴み所のないテーマを前にして学生は解釈に苦しんだようですが、答えのない問いに挑戦してこそMBAです。ただしDISPLACEMENTというテーマの解釈や定義に悩むより、ここでは門外漢の挑戦を可能にした背景変化や、王者が無抵抗に終わった理由を整理すべきだったのではないかと思います。たとえば京都チームが選んだウェザーニュースは規制緩和、三宮チームのクックパッドはIT技術を背景変化として成立したケースです。このように背景変化が明確なケースは、そうでないケースよりもポテンシャルが高いと言ってよいでしょう。そしてケースとして本当に面白いのは、王者が単に抵抗しなかったケースではなく、抵抗しようにもできない状態に追い込まれてしまったケースでしょう。

その視点から言えば、
御影チーム:ABCクッキングスタジオ
芦屋チーム:宝島スイート
淀川チーム:CFM初音ミク
は王者のプライドが障害に転じたケースです。
ほかに
東灘チーム:白鳳堂化粧筆
尼崎チーム:パナソニック・アラウーノ
のようなケースでは王者の固定投資が障害になっており、上の三ケースよりはテーマ適合性が高いように思います。
さらに 大阪チーム:ワークスアプリケーションズ
では、王者のパートナー企業が追随すれば減収必至という意味で「進むも地獄、退くも地獄」の状況に追い込まれており、テーマ適合性は最高だったのではないでしょうか。

最終発表会の結果は以下のとおりでした。
金賞:宝島スイート(芦屋チーム)
銀賞:CFM初音ミク(淀川チーム)
銅賞:ナビタイム(宝塚チーム)
宝塚チームと淀川チームは、ケースのテーマ適合性が必ずしも最強ではありませんでしたが、分析の深さや発表の工夫で逆転したのだと思います。芦屋チームはDISPLACEMENTの対象を二段にわたって捉え直した結果、テーマ適合性が飛躍的に高まり、それが既視感のあるケースにもかかわらず金メダルをもたらしました。

結果が出たあとに提出してもらう内省レポートを読むと、その背景がよくわかります。特に芦屋チームと淀川チームは、個々人の視点に微妙な差や個性が滲み出るものの、全チーム構成員がケースに深く入り込んでいるという意味で「高体温」チームであったことがわかります。これは、お互いがお互いを触発しあう上昇スパイラルが作用し、全員が触発された証だと思います。その点で西宮チームもチーム力は秀でていたようですが、ここはケースのテーマ適合性が相対的に低く、それが結果に響いたのかもしれません。

面白いことに、機能したチームには共通点があります。それは、豪腕のリーダーがいないという点です。8人もしくは4人で漕ぐボートでは、筋肉隆々のスターを抱えるボートより、全員が等しく青白いボートのほうが速いという経験を私も味わったことがありますが、それと同じ現象が起きている気がします。機能したチームには「ひたむき」という形容の似合う人が複数いて、それが上昇スパイラル現象につながったのではないでしょうか。実際に、ケースのテーマ適合性が高いにもかかわらず結果が思わしくなかったチームでは、逆に暴走現象が見受けられました。テーマあってのケースであるはずなのに、途中でケースそのものが面白くなり、DISPLACEMENTとは別のテーマを前に出すプレゼンテーションに帰着しては、暴走の謗りを免れないでしょう。

こうして書き連ねると切りがありませんが、要は今回の学習を次にどう活かすかです。このあとにはテーマプロジェクトが控えていますし、第三弾として修士論文もあります。反省を活かす場には事欠かないはずです。そして何よりもケースプロジェクトで学んだ教訓を実務に活かしていただければ、入学してから四ヶ月強のハードな日々が報われることと思います。

(文責:三品和広)

 

 

◆金賞チーム

※金賞チームのインタビューは
 こちらからご覧下さい。


 
 
◇銀賞チーム
   
 
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